ノンサンミッシェル

砂の城 2007年8月18日(土)の築城レポート

 3年にわたって苦闘を重ねてきた“日本の城”が、昨年、一応満足できるレベルに達したことから、今年(07年)は改めて西洋の城にチャレンジすることにした。メルヘンチックな“お城”は好みでないので、あの「モン・サン・ミッシェル」を基本イメージに、会長・笠井がプランをつくった。
城 今年は梅雨明けが遅れ、7月中は冷房も必要ないほどの涼しさだった。ところが8月に入るとにわかに猛暑日が続き、それまでの借りを返すような暑さとなった。北関東では40℃を超え、観測史上の記録を樹立したほどである。築城当日もすさまじい暑さが予想され、笠井は各方面にパラソル持参を呼びかけたが、たまたま冷気が南下してきて涼しい曇天となった。もうひとつ、いつもと違うことがあった。7月の中頃に大型の台風が太平洋側を襲い、海岸に高波が打ち寄せた。江ノ島海岸も砂が削り取られ、通過直後は、各所に2mもの崖のような段差ができるほど海岸が荒れてしまっていた。多数のパワーショベルを入れるなどして一応の整備は行われたが、砂浜が狭くなり、すっかり様相が変わっている。それもあって、海の家の前方は混雑がひどく、例年より200mも鵠沼寄りに位置を移すことになった。
 例によって特別会員の幸山義昭が先着。少し遅れてフリーライターの関根利子(初参加)、イラストイレーターの山本祥子、セカンドサイドのデザイナー安井友香、唄を忘れたイラストレーターPATAがやって来た。珍しや強腕マッサージ師ミッチー安田も顔を出す。所用で遅れた村上祥子、寝坊したスーパー派遣社員・永瀬美由樹を加えて9人の参加となった。しかし、直前に男性陣が軒並み脱落したため、老人2人と婦女子7人というバランスを欠いたメンバー構成。先行きに不安がよぎる。
 山を築き始めると、たちまちパワー不足が露呈した。笠井・幸山は息が上がり、女性陣にも各自スコップ30杯分の砂積みを義務化。ようやく山は高くなっていく。そんななか、強腕を期待されたミッチー安田は、どっかと座り込んで大飯を食らい、終わったと思ったら、やおらビールを飲み始めるていたらくで、一同をあきれさせた。
切り妻屋根 さて、「モン・サン・ミッシェル」は戦闘用の城郭ではなく、教会や修道院の集合体であることから、尖塔よりも切り妻屋根の建物が多い。大まかには箱を積み重ねたような形となっている。そこで、早くから山をスコップで四角く切り崩し、その上にバケツを伏せて多くの建物をつくり込んでいった。各人が思いのままに小さな建物をつくれるので、関根・安井・山本ら経験の浅いメンバーも楽しめたのではないかと思う。
 箱のような建物はどうしても屋上が平らで単調になる。胸壁をつくると形が良くなるのだが、この作業は手間がかかる。どうしようかと考えていると、安井が自ら志願し、きちんとした形に仕上げた。その功績により、「セカンドサイドの女」という肩書きを改め、「胸壁の女仕事師」と呼ばれることになった。村上祥子も、コーナー部分に階段状の建造物を削り込むといった造形に冴えを見せていた。今までにないアイデアで、当会のオリジナルデザインとして、今後も取り入れていきたいと思う。
 完成後、各方向から眺めてみるとなかなかバランスが良く、細部も丁寧につくり込まれている。随所に新しいアイデアがあり、すばらしい出来だと確信した。もしかすると、我らの“史上ナンバーワン”かもしれない。多くの方々のご意見をうかがいたいものである。ただ、各人が個性を発揮して楽しんだため、「モン・サン・ミッシェル」ならぬ「ノン・サン・ミッシェル」になってしまった。ま、仕方のないことではあるが。
 ところで、前述のように海岸の様相が変わったことから、今年は潮の満ち干を見極めるのがむずかしかった。安全を考えて決めた位置が高過ぎ、完成後も波打ち際までの距離はかなりあった。波による崩落を見届けるのはあきらめ、砂浜を引き上げることにした。
 いつもなら、江ノ島駅前の蕎麦屋で打ち上げを行うところだが、何と何と、その蕎麦屋がつぶれてしまっていた! どこか良い店はないかと探していると、少し引っ込んだところに小さな魚料理屋をみつけた。開店の準備をしていたおじさんに聞くとOKだという。上がり込んでみるとなかなか良い店で、魚がおいしい。来年もここにしようなどと思いながら、一同は楽しく酒を酌み交わしたのだった。

砂の城

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砂の城スタッフ

今年の参加者。(後列左から)もう一人の“祥子”・山本、胸壁の仕事師・安井、スーパー派遣社員・永瀬、唄を忘れたイラストレーター・PATA、強腕マッサージ師・ミッチー安田、(前列左から)茶髪ライター・関根、会長・笠井、特別会員・幸山 
(もっこすデザイナー・村上祥子が撮影)

Text:N.Kasai

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