今年の城

砂の城 2014年8月2日(土)の築城レポート

 7月22日の梅雨明けとともに、にわかに暑さを増した今年の夏。8月2日の湘南地方は曇りの予報だったが、午前中から晴れ上がり、時折雲は流れるも強い日差しにさらされる一日となった。ただ、南方の海上に台風が発生しており、その影響で波が荒い。まさに「天気晴朗なれど波高し」状態だ。
 11時半頃、会長・笠井が浜に到着し、昨年と同じあたりで適地を探していると、青いテントの中から眼鏡の女性が声をかけてきた。以前、パタ先生に紹介されたデザイン学校の同級生・藤崎ノンさんと長男のT君だ。当日は家族総出(ご主人と子ども3人)で9時過ぎにやってきて、海で遊びながら待っていたという。T君は高校生なので体力がありそうと大いに期待する。
 間もなく幸山副会長が現われ、朝の満潮時の濡れ跡から1mほど海側に築城地点を定める。昼食を取りながら若手の到着を待っていると、20〜30分ほどでトシモト社中の山田とトシモト、そしてトシモトの同級生・木村マリちゃんがやってきた。少し遅れて鈴木ヒロシも加わる。山手線で事故があり、都心の交通が乱れているとのこと。パタ先生も巻き込まれ、30〜40分遅れで到着した。
 若者が5人もいるので心強い。幸山副会長の指示のもと大きな山をつくり始める。トシモトがスコップを振りかぶって頂上に叩きつける「土羽打ち」は、いつになく力がこもって、「どうしたんだ?」「何かあったのか?」と社中から声がかかる。皆も知る複雑家庭の三男なので、やはり鬱憤がたまることもあるのだろう。
 山がほぼできあがる頃、トシモト社中の綿貫がひょいと現れた。「重労働が終わるのを見計らってきたな」と非難の声が上がるも、綿貫は無言でニヤニヤ。
 今年、笠井がつくったプランは、大きめのタワーが1本だけ立ち、前方に複雑な階段で結ばれた箱型の建造物が重なり合うというもの。「これは難しいな」と幸山副会長が首をかしげた通り、階段部分に手こずって若干のごまかしが入った。
 左側面と後方はパタ先生&藤崎母子が担当し、例によってテルマエをつくり始めた。このテルマエはなかなか手の込んだ造形で、近年、見どころの一つとなっている。右側面はトシモト社中の担当だが、ここで大がかりな工事が始まった。ぐぐっと翼を張り出して上部に回廊をつくり込み、先端にタワーを立てるのだという。もちろん、そういう提案は大歓迎。若い世代の前向きな姿勢がうれしい。しかも彼らは回廊の下に2本のトンネルを掘り始めた。かつてトンネルに挑戦し、何度も崩落の憂き目にあっているので、「おいおい大丈夫か?」と声をかけたくなるが、そこはぐっとこらえた。

 8割方できたところへ、ひょろりと背の高いサングラス男がやってきた。トシモトたちの同級生で、長田健(たける)という若い衆。仲間に誘われていたのだが、都内でよからぬことをしていて、こんな時間になったらしい。ま、飲み会だけの参加にも鷹揚な「江ノ城会」だから、それはそれで結構なことである。
 3時半を過ぎた頃、ついに城は完成。翼が張り出したため、かつてない大きさになった。高さでは2011年の「忘れられないBBQ大会」でつくった城(本サイトの「ある夏、あるイベントで…」を参照)に及ばないが、規模はこちらが上回っている。心配したトンネルもしっかりとできあがり、テルマエはいつも通り手が込んでいて美しい。藤崎親子が担当した後方では、T君が活躍。幸山副会長の指導のもとにダイナミックな大階段を仕上げた。その階段脇に、母のノンさんも素敵な「噴水」をつくり込み、これは新機軸。初参加者のフレッシュな感性が、こんなところに生かされた。
 さて、最後の見どころは波による崩壊だ。波が荒い日だけに劇的な光景が見られるのではないかと期待されたが、4時になっても迫ってこない。各自、ビールを飲んだり、写真を撮ったり、ギャラリーとしゃべったりしながら待っていると、4時半前にようやく大きなのが2つ3つ押し寄せてきて、足元を洗って行った。だが、あとが続かない。10分、20分と過ぎていく。ついに「ここまでか」とあきらめて、撤収にかかった。浜を歩き去りながら幾度も振り返ってみたが、結局、崩壊には至らなかったようだ。「このところ判断の誤りが多い。そろそろ身を引くときが近いのではないか…」という想いが笠井の脳裏を去来した。
 藤崎ファミリーのうち3人と、木村マリちゃんは先に帰ったので、幹部3人と社中のボーイズ5人、藤崎ノンさんとT君の10人でいつもの「ねこん家」の板の間に上がり込み、楽しくにぎやかに打ち上げたのだった。

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砂の城

砂の城


砂の城ムービー(撮影:Pata)
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Text:N.Kasai

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